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マインドフルネスと太極拳

マインドフルネスと言う言葉があります。
「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」※などと言われ、脳(心)を休め、リフレッシュする効果があります。

 

もともと仏教に由来する言葉のようですが、太極拳は非常にマインドフルネスな運動であると考えられます。
太極拳の練習中は自分の身体に集中し、まさに「今、この瞬間」身体がどのように動いているかに意識を向けます。
そして伸びやかに気持ちよく、ゆっくり動作することで、身体を丁寧に使います。
マインドフルネスに興味があるが、「瞑想は寝てしまう」「身体を動かしたい」という方には太極拳をおすすめします。

 

ただし、太極拳をマインドフルネスに練習するにはコツが要ります。
練習の仕方によっては効果が半減してしまいます。

 

マインドフルネスの効果は脳を「シングルタスク」にすることで得られると言います。
「シングルタスク」とは複数のことを同時に考えないということです。
つまり身体に集中していても、沢山の要訣を意識していると「マルチタスク」となってしまい、マインドフルネスから遠のいてしまうのです。

 

レッスン中は姿勢や身体の使い方について沢山の要訣やポイントを説明しますが、常にそれらすべてを意識して練習すると脳が疲れてしまいます。
「意識することが多すぎて…」という言葉を耳にすることがあります。
この場合、身体に集中することで、余計な雑念が発生しない状況にはなっていますが、脳は休んでいない状態と考えられます。

 

練習時は、その日意識することを2~3つ程度に絞って練習することが重要です。
例えば、基本の12のポイントの中から、「指先まで意識する」「胸をゆるめる」「肩を落とす」だけを意識して行うような感じです。
また、一つの技を切り出してそれに集中して練習するのも良いでしょう。
雲手や攬雀尾、摟膝拗歩など、左右繰り返し続けて行える技が適しています。

 

慣れてきたら、細かな要訣は意識せず、「抽象度をあげて1つだけ」意識をして行います。

 

「抽象度をあげて1つだけ」とは、例えば、
 ・「気持ちよく」だけを意識する。
 ・呼吸だけを意識する。
 ・重心だけを意識する。
 ・身体の流れだけを意識する。
 ・膨張感だけを意識する。
のようなもので、全身を一体として動かします。

 

このように練習を行うことで、脳を「シングルタスク」にすることができ、マインドフルネスでかつ、身体にもリラクゼーション効果が期待できます。
身体の疲れも、心の疲れもより癒やすことができる太極拳になると思います。